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猪瀬直樹 ism 3

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・・・唱歌誕生 ふるさとを創った男 

 

ふるさとを創った男・・

日本人なら誰でも知っている文部省唱歌『故郷』『春が来た』『紅葉』などを創った高野辰之、岡村貞一の物語です。

・・高野辰之 ・・岡村貞一


『故郷』『春が来た』『紅葉』などの唱歌が、高野辰之、岡村貞一の作詞作曲だという証拠はなく、実際に文部省唱歌とだけ記載されているようです。それがいくつかの実証と、高野・岡村の当時の職務と重ね合わせて、何時の頃からかこれらの作詞作曲という伝聞が広がった様です。・・・それを踏まえて、ここで語られるのは、『志を果たして、何時の日にか帰らん』と詠った無数の『高野辰之』、『岡村貞一』の物語のようです。
この物語に、島崎藤村が絡んできます。藤村は、最初詩人として出発します。『千曲川旅情の歌』から始まる、『椰子の実』などの新体詩人・籐村です。

・・島崎藤村


このふたり、藤村と高野辰之を対比しながら、『若菜集』などの詩集で文学史上に名を遺した籐村と、唱歌として歌い継がれる『故郷』を遺した文部省官吏・高野辰之を鮮やかに描いています。ともに信州の出身です。当初藤村は、有名になったが詩人では生活できず、借金で生活を維持しながら3人の娘の死を代償に、教員で糊口を拭いながら『破戒』を書き、小説家として再出発しようします。大作の小説「夜明け前」が執筆されるのはこれから後のことです。一方、師範学校卒の故に、高等官になれず鬱々と国定教科書の編纂に携わる高野辰之。ふたりのこの前提の上で・・『志を果たして、何時の日にか帰らん』と思い、『夢は今もめぐ』る物語です。
唱歌の詞のほうが高野辰之なら、曲の方は岡村貞一です。鳥取の没落士族の子に生まれ、やがて、故郷を捨て岡山のキリスト教会で育ちます。東京音楽学校を卒業し、母校の教壇に立ち、終生日曜の教会のミサで、オルガンを弾いた実直な音楽家です。
このふたり高野と岡村が出会うことで、数々の唱歌が生まれたという伝説。この伝説に籐村を配し、明治・大正という時代に生きた三様の人生を描きます。
・・・でも、不思議なことに、高野辰之の「詩人としての資質」の部分が見えてきません。これらの唱歌の歌詞の部分は、詩についての読解力の乏しい自分にも完成度の高さを感じさせるものです。ここは、はて?・・と思ってしまいます。

故郷・・

故郷 - YouTube

確かに、作詞作曲が誰であっても、いい曲ですし、懐かしく思い、記憶も鮮明です。

紅葉・・

紅葉 唱歌 NHK児童合唱団(音楽&風景) - YouTube

音楽の教科書に、作詞作曲の記載が無く、文部省唱歌とだけ記載されていたそうです。記憶が曖昧なので、そう言われればそうかも、と思います。

朧月夜・・

文部省唱歌 朧月夜 - YouTube

春が来た・・

春が来た (杉並児童合唱団) - YouTube

春の小川・・

春の小川 - YouTube

 

島崎藤村はともかく、高野辰之や岡村貞一の”隠れた部分”を嗅ぎ分けて実証調査し、その部分に光を当てて顕在化してくるやり方は、日本凡人伝の手法のなかの、「インタビュー」ではない実証調査のやり方で、方法は若干違うが、それが猪瀬ismなのだろう、と思います。

正直これも面白かったし、懐かしい唱歌の、今まで知らなかったことを暴き出したことは、猪瀬氏の評価の部分に思えます。

それと、”ウェットな近代合理主義者”の”ウェット”な部分が、ここでは少し滲み出ています。文学的な所は、少なからず”ウェット”なのかも知れません。 

作家猪瀬直樹はいま、政治家猪瀬直樹をどう見ているのだろう?

 次は、「明日も夕焼け」について書いてみます。


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