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Channel: ときどりの鳴く 喫茶店
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猪瀬直樹 ism 2

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前回、猪瀬直樹の考え方・・ism・・は、彼の書物から探るのが適当かと思われます、と書きました。でも猪瀬の本の、あまりよい読者でもないとも書きました。したがって、極めて独断的で偏見のある感想と猪瀬評になるのではないかと思っています。

 ・・・日本凡人伝・唱歌誕生

猪瀬の書物は数が多いが全て読んだわけではありません。というよりも、目を通したのは半分以下。

彼の出版した本を列挙すると次の様になります。


『天皇の影法師』
『昭和16年夏の敗戦 総力戦研究所"模擬内閣"の日米戦必敗の予測』
『日本凡人伝』
『死者たちのロッキード事件』
『日本凡人伝-二度目の仕事』
『あさってのジョー』
『ミカドの肖像』
『死を見つめる仕事』
『土地の神話』
『ノンフィクション宣言』
『ニューズの冒険』
『東京レクイエム』
『今をつかむ仕事」
『東京、ながい夢』
『ふるさとを創った男』
『欲望のメディア』
『ミカドの国の記号論』
『ニュースの考古学』
『迷路の達人 猪瀬直樹エッセイ全集成』『僕の青春放浪』
『禁忌の領域 ニュースの考古学2』
『黒船の世紀 ミカドの国の未来戦記』
『交通事故鑑定人S氏の事件簿』
『ニュースの考古学 3』
『ペルソナ-三島由紀夫伝』
劇画原作『ラストニュース』
『ニッポンを読み解く!』
『瀕死のジャーナリズム』
『日本国の研究』
『マガジン青春譜』
『続・日本国の研究』
『明日も夕焼け』
『二十世紀-日本の戦争』
『ピカレスク-太宰治伝』
『小論文の書き方』

 

あらっぽい感想・・・

この中で小説っぽいのはあまり面白くなかった。取材して書いた、分析的な代表作は、文章が硬質で読みづらかった。

その中で、何とか読んだのは、『昭和16年夏の敗戦 総力戦研究所"模擬内閣"の日米戦必敗の予測』、『日本凡人伝』、『ふるさとを創った男・唱歌誕生』、『ピカレスク-太宰治伝』、『明日も夕焼け』ぐらい・・・・・出世作『天皇の影法師』や『ミカドの肖像』は読むことは読んだが、・・・これが、先の感想で、かなり読みづらく、あまりいい印象はない。読んだ本は、半分どころか三分の一にもいってないようだ。

そのなかで、・

日本凡人伝・・
この本は、かなりいいと思う。凡人伝とうたっているが、凡人の中の非凡な部分をかなり鋭くえぐり出しているように思う。この非凡な部分のえぐり出し方が、猪瀬の優れた手法のように思う。

内容は次の様になる・

*”田植え”の秘密
・・スジ屋・東京北鉄道管理局運転都列車課長山崎喜三郎氏の場合

*オンボーの時代
・・穏亡アナウンサー・ラジオ日本制作第一部長大林晃氏の場合 *穏亡という言葉はそれまで知らなかった。

*去れどわれらが日々
・・都バス車掌・東京都交通局目黒自動車営業所車掌丸山絹子女史の場合

*キョーフの臭才感覚
・・調香師・株式会社資生堂研究所香料研究室主任研究員上野山重治氏の場合 *調香師という職業があることを知らなかった。

*火事場インタヴュー入門
・・消防調査員・東京消防庁予防部調査課原因調査係主任渡辺政彦氏の場合

*ロッキード事故
・・元丸紅社員・株式会社東通取締役開発事業部長坂篁一氏の場合

*11506頭のブルース
・・捕鯨砲手・日本共同捕鯨株式会社捕鯨船砲手背古昌尚氏の場合

*乗りかえ哲学
・・地下鉄車掌・帝都高速度交通営団赤坂見附駅務区主席助役柿尾雅夫氏の場合

*いつもの身の上話
・・都はるみマネージャー・株式会社サンミュージックプロダクション第一制作チーフマネージャー横山雅良氏の場合

*俺の消しゴム
・・トラブル処理係・株式会社講談社編集総務局編集総務部長小松道男氏の場合

*嗚呼、ルネッサンス
・・億ション販売人・東高ハウス株式会社取締役社長室長山田忠氏の場合

*明るいナショナリスト
・・ウォークマン開発者・ソニー株式会社PPセンター部長黒木靖夫氏の場合

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さて、この本は1980年初頭の「スタジオ・ボイス」に連載されたものを書籍化したようです。・・・「『スタジオ・ボイス』には、編集部によるインタビュー記事も組まれているが、気負いや衒いがなく、人間に対する態度が自然で、同時に複眼的であり、誌面全体に時代の進歩を思わせる瑞々しい感覚が溢れている。『日本凡人伝』の成功は、たぶん、この媒体のそうした特性に負うところが少なくない」(引用・新潮文庫『日本凡人伝』解説)
彼は文庫版担った時、「あとがきにかえて」で猪瀬氏はこう語っている。「僕は、偉いやつ、偉くないやつ、なんて観念がないから。初対面で名刺もらって、うっかり名刺入れにしまっちゃうと相手の名前を失念して、仕方なしに『あなたはーー」を連発する破目になることもあるんだ。それでもインタヴューに支障がないのは、相手を肩書きで診てないからです」・・・猪瀬氏の態度は「横柄だ」とか「ぞんざいだ」と批判されることがたまにあるが、1985年のこの発言をきくと、それは彼がひとを見極めるためにあえて意図してきたことのようにも思える。そして、こうも言っている・・・「ワケわかんないやつが出てる。それが『スタジオ・ボイス』の良さだよ」
・・・初めて会ったその場でどこまで内側に入り込めるか。『日本凡人伝』の新しさは、その取材対象だけではなく、対象との距離感にある。時には飛び込みもあったインタヴュー。テキスト化された言葉の行間に、交わされた会話の温度が伝わる。・・「相手側にうまく入ってみればおもしろい。内面がね、けっこう言葉が出てくるんだよ、突っ込んでいくと」。・・世の中には、陽のあてられていない、まだ見ぬドラマがある。そこに光を照射した。・・「たまたま葬式中継のアナウンサーがいるんで話してみようかとなった。取材終わった後に決めたんだよ、『これシリーズでやろう』って。タイトル考えて。おもしろいものをやれる空気があった。はじけるような部分があったんだよ。『スタジオ・ボイス』ってのは。まだ有名になる前のワケわかんないやつが出てたよな。先物買いで」。
・・・ここに出てくるのは、政治家・猪瀬直樹ではなく、探究心に満ちたまさしく作家・猪瀬直樹だった。   ・・・「あとがき」・「解説」などを借りて、まとめてみました。

この中でどれもが面白かったと言えば、個人的には、「田植え・・」と「キョーフ・・」と「ロッキード・・」であるが、読む人によって様々で、たぶん個人差があると思う。それよりも、凡人の中の”非凡さ”を嗅ぎ分けて顕在して表現化する感性というか、手法というか、これが猪瀬直樹の特質のように思う。

 参考 .中日新聞:中日春秋:コラム(CHUNICHI Web) (同内容・東京新聞)

 http://www.chunichi.co.jp/article/column/syunju/CK20131220020

特に「ロッキード事故」のインタヴゥーの所は、読み直してみて、猪瀬氏の今回と重ね合わせて、皮肉っぽくて感慨が深かった。

・・・お金の遣り取りが無くても、機種選定はロッキードに決まっていた。にもかかわらず、時の首相と米国の航空機会社の間で、儀式としてのお金の遣り取りがあり、無関係の筈の機種選定が、お金の遣り取りと絡んでしまったそうで・・・こんな危うい歴史の事実を知っている筈の猪瀬氏が何で・・・と思わずにはいられない。

読んでみると、猪瀬直樹の判断基準は、ウェットな面を持った近代合理主義者のようである。これは、以前と変わっていないように思えます。
彼は、しばしば「尊大」とか「こわもて」のように評論されますが、本田さんの解説だと思いますが、・・・猪瀬氏の態度は「横柄だ」とか「ぞんざいだ」と批判されることがたまにあるが、1985年のこの発言をきくと、それは彼がひとを見極めるためにあえて意図してきたことのようにも思える・・・と、意図した演技性のスタンスの面を持つようです。

作家猪瀬直樹はいま、政治家猪瀬直樹をどう見ているのだろう?

・・・次章は、「ふるさとを創った男 唱歌誕生」

 

 

 


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